インターネットで検索をすると、「医学部偏差値ランキング」「医学部のヒエラルキー」などの記事は星の数ほど見られます。
また、大手週刊誌でも医学部受験生の親向けに「医学部の総合ランキング特集」などは春先になると、毎年のように見られます。
医学部と学歴があまり関係がないように思われるかもしれませんが、医学部受験を考える人だけではなく、世間は医学部の「格付け」に非常に興味があるようです。
今回は、医学部の「中」と「外」のヒエラルキーについて、分析していきます。
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『白い巨塔』の世界?医学部内のヒエラルキー
医学部の中のヒエラルキーを描いた作品といえば、山崎豊子作『白い巨塔』でしょう。とある大学の外科医局で巻き起こる権力争いを描いた長編の傑作です。
医師という職業は今も昔も「聖職」として捉えられることが多く、「患者のために人生を捧げる」といった「清い」イメージが強いのではないでしょうか。
しかしそのようなイメージとは裏腹に医学部、特に大学医局の人事制度は非常に泥臭く時に血みどろの争いに発展することもあり、そこには数々のドラマがあります。
『白い巨塔』のような光景はどこの医学部でも見られるでしょう。
医学部の階級制度とパワーバランス
医学部には「医学研究科」という大学院があり、その中で基礎系と臨床系の2つのグループに分けられます。それぞれのグループの中にたくさんの「医局」あるいは「講座」があり、医局・講座ごとに教授が任命されています。
医局・講座のヒエラルキーは、教授を頂点として、准教授・講師・助教・助手と続きます。これらの階級は国立大学が法人化した時に制定されたもので、以前は「教官」と呼ばれた役職も今は「教員」と改められています。
これは医学部にいると肌感覚で分かることですが、基礎系と臨床系の教授では、臨床系の教授の方が学内での力が強いことが多いです。
それぞれの医局・講座の間にもヒエラルキーがあり、一般的にはたくさんの研究費を集めて大規模な研究を指揮できる研究室(医局・講座)の教授は学内での発言力も強くなる傾向にあります。
ある研究で研究費を集めて高額な研究機器を購入したりすると、それは大学全体の所有物になるので、他の研究室の教員たちからも有り難がられますし、大学としても箔がつく、ということです。
臨床系の研究は大規模になりがちですし、研究機器も高額で、研究費は基礎系よりも莫大です。
そのため、学内では臨床系の教授の権力が強くなり、学部長や学長なども医学部の臨床系教授が立候補・当選しやすいに傾向あります。
「医学部はどこも同じ」は本当か
予備校のスタッフや高校教員はよく「医学部であればどこでも同じ」「医師免許とったらみんな一緒」と言いますが、実際のところ、本当に同じなのでしょうか。医学部同士のヒエラルキーについて分析してみます。
医学部同士のヒエラルキー・旧帝国大学の強いブランド力
医学部内のヒエラルキーがあることは事実ですが、医学部同士にヒエラルキーはあるのでしょうか。端的に言えば、ヒエラルキーはあります。しかし一口にヒエラルキーといっても、その意味するところは様々です。ヒエラルキーの1つは、いわゆる「学閥」としてのヒエラルキーです。
東京大学や京都大学をはじめとする旧帝国大学や私立御三家の医学部は、その卒業生の多さ、医師だけではなく各界に卒業生がいることからも、非常に強いブランド力を持っています。
そこを卒業するということは、それだけ優秀である証であり、将来の進路は優遇されます。また、それぞれの医学部には系列の病院と呼ばれるものがありますが、優秀な研修医が集まる人気の高い病院はこれらの旧帝国大学の系列病院に多い傾向にあります。
また、旧帝国大学は研究機としての役割が強いため、基礎研究に携わる優秀な医師たちはこれらの大学に集まる傾向にあります。
つまり、「医学部はどこも同じ」は間違いです。
地方の医学部は研究力も弱く、臨床の現場においても、その大学の力の及ぶ範囲は限られるため、都市部で働くことを考えると初期研修のマッチングなどはブランド力のある大学に比べると不利になります。都市部は古くからある医学部の学閥の影響が強いのです。
この辺りは普通の就活と変わりませんね。医学部といえども、大学のネームバリューという学歴の影響は少なからずあるのです。
「医学部ならどこでもいい!」冷静に情報を集めて最良の選択をしよう
多くの医学部受験生は、「医学部に入れればどこでもいい」「医師免許に大学名は付かない」と考えるでしょうし、大手の予備校ではそのような受験指導が行われていることがほとんどだと思います。
しかし、入学してみると、立地や教授の質、卒後の研修先のバリエーションなど、大学によって非常に差があります。
受験の時点でそのようなことまで考える人はあまりいないと思いますが、受験の時期までに余裕のある高校1年生や中学生たちで医学部を志望する人はよく考えて欲しいと思います。
日本の医療は大きな転換期を迎えており、私たち現役の医学生や皆さんのような医学部受験生たちが医師になる頃には、医師の働き方は全く違っているでしょう。
このような点からも、受験する医学部についてはできる限りの情報を集めて、よく考えてから志望校を決めましょう。
インターネット上にある意義の曖昧な大学ランキングや週刊誌の格付けチェック、予備校で発表される偏差値ランキングなどに振り回されずに、自分の手で掴んだ事実を元に自分自身で考えることが大切です。
これから医学部の「格付け」は変わる
センター試験の廃止に伴い、医学部受験の情勢も様変わりしそうなこの頃ですが、医学生・医師の世界も大きな転換期を迎えています。具体的にどのような変化が見られるのでしょうか。
新設医学部の取り組みによって日本の医師の「格付け」が変わる
今ある医学部の中で一番新しく設立された国際福祉医療大学・医学部のカリキュラムでは、全学生が米国医師国家試験であるUSMLE(United States Medical Licensing Examination)を受験することを推奨するとされています。
本学では5年次の3月までにUSMLEのStep1を受験することを全学生に推奨し、課外で対策講義を実施します”(国際福祉医療大学・医学部HPより)これは非常に大きなインパクトのある発表でした。これまでにも日本人でUSMLEを受験し合格して実際にアメリカで医師として働いている人はたくさんいましたが、大学が主導してUSMLEの受験を推奨することなど全くなかったからです。
「何が変わるのか、日本の医師免許で十分だろ」「米国に行きたい人は一握りなのでは」と思うかもしれませんが、その考えは間違いです。
国際福祉医療大学の取り組みによって、これからの日本の医師でUSMLE合格者はどんどん増えていくでしょう。
他大学もこれに追随することが予想されますし、国際標準のライセンスを取得したという事実は、医師の「学歴」の1つになっていくと思います。
現在のところ、日本の医師免許は世界的には全く意味のないライセンスです。国際水準に達していると認められていません。世界でもトップクラスの医療を提供しているにも関わらず、医師免許は二流ということです。
これを国際水準として認証されるために、各大学の医学部はカリキュラムを変え、国際認証を取得するために奔走しています。(すでに取得が決まっている医学部もあります)
女子受験生の差別入試によって東京医科大学はこの国際認証を取り消されました。つまり東京医科大学の卒業生は、国際水準の医師免許を持たないということになります。
これは非常に遺憾なことです。首席で卒業しようとも海外では医師として二流の烙印がつけられます。(これは少し厳しい言い方かもしれませんが…)
このことからも分かるように、これからの日本の医学部の格付けの評価軸として「USMLEが取得できるか」という点が加わっていくことは明白でしょう。現在の医学部ランキングは大きく様変わりすると考えられます。
USMLEの取得増加によって日本から医師が消える?
「そんなわけない!」と思うかもしれませんが、決して否定できない未来です。みなさんもご存知のように(知らない人は結構ヤバイですよ!)、日本の医師の労働環境は世界でも最悪と言っていい状況です。
主治医制度が続いていることによって休日が実質無く、36時間という長時間労働が(ほとんど強制的に)普通に行われている現状は、最悪と言って差し支えないでしょう。
ずさんな当直制度も大きな問題です。開業医はほんの一握りですし、多くの医師は勤務医として働きますから、これらの問題は多くの医学部受験生にとって人ごとではありません。
このような状況で、日本で喜んで働く医師はいるでしょうか。私は決して喜んで働きたいとは思えません。今働いている医師たちの大いなる奉仕精神によって日本の医療は成り立っています。
ここにUSMLE取得という、より待遇のいい労働環境への切符が手に入ったらどうなるでしょう。学歴が高く、優秀な医師から日本を去ることは否定できません。
また、このように海外で働く人が一定数出てくると、我も我も続く医学生・医師が出てくるでしょう。そうなれば、USMLE取得は当たり前になり、医師としての「格付け」の1つの評価軸になります。
日本と米国のダブルライセンスが標準になる日はそう遠くないと思います。受験生を絶望させる事実かもしれませんが、みなさんが直面する現実です。あなたがどの道を選ぶかは自分次第です。
医局のパワーも今は昔。自分の目指す医師像を明確に持つことが大切
日本の医学部のヒエラルキーは徐々に変わってきています。医局制度を廃止する大学もあり、昔のような医学部内のヒエラルキーも医学部同士のヒエラルキーもなくなる日が来るかもしれません。
このような時代に医師を目指すみなさんには、学歴や格付けといった「人からの評価」に振り回されることなく、「自分の幸せ」を追求して、医師としての人生設計をして欲しいと思います。
医療を行う人が健康で幸せでなければ、本当に良い医療は提供できないと私は考えています。
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