女性医師は年々増加する傾向にあります。これはつまり、医学部入試における女性の合格者が増加していることを意味します。
女性の合格者が増加している理由には様々な要因があると考えられますが、よく挙げられるのが「女性医師のニーズが増加している」ということです。
女性医師増加は、本当に社会のニーズを反映しているのでしょうか。社会において求められている女性医師とはどのようなものなのでしょうか。今回は、女性医師の増加と、そのニーズについて分析していきます。
目次
- 女性の医学部入試合格者はどれだけ増えているのか?
- 社会が求めている女性医師とは?
- 日本人の思う「女性医師のニーズ」は男性では満たせないものなのか
- 女性医師の増加は喜ばしいこと、しかし社会はそれを正しく求めるべき
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女性の医学部入試合格者はどれだけ増えているのか?
女性医師に対するニーズとの関連性は明らかではありませんが、女性の医学部入試の合格者はどのくらい増加しているのでしょうか。合格者増加の割合と、女性の医学部入試合格者が増加している原因を分析していきましょう。
女性の医学部入試合格者は30%程度で横ばいとなっている
女性の合格者は、20年前に30%を超えてからはほとんど横ばいとなっている、と言われています。これは、他学部の女性受験者の増加に比べると、低いと言えるでしょう。
これについては、昨年明らかになった医学部入試における女性差別から分かるように、わざと女性を合格させなかったことが原因としてあります。女性差別の理由として「医師不足になるから」ということが挙げられていましたが、女性を合格させなくなってからも医師不足の現状は変わっていません。
実際のところ女性医師は20年前からは横ばいになっているはずですが、産休や育休後に医師として復帰する人が少なかったことから考えると、現在は出産後も働き続ける医師が多いため増加しているように見える、というのが現実ではないでしょうか。
女性の医学部入試合格者はなぜ増えているのか
女性の合格者が増加した背景には、ここ数十年の間に起きた、日本の社会的構造の変化があると考えられます。
平成の30年の間に日本の社会的構造は大きく変化しました。女性は高校や短大までしか進学せず、専門的ではない職業に就き、結婚すれば仕事を辞めて専業主婦として家庭内労働に従事する、というのが当たり前であった時代から、女性も四年制大学へ進学、専門職に就き、結婚後も働き続ける、というライフモデルが徐々に浸透してきました。
そのような時代の流れによって、「女性も医師を目指しやすくなった」ということが、女性の医学部入試合格者の増加に繋がっていると考えられます。
昭和や平成の初め頃は「女が手に職をつけると結婚できない」「賢い女は可愛げがない」といった男尊女卑的な思考が日本全体にありました。今も無くなったとは言えませんし、そのような言説に苦しめられている女性が一定数いることは否定できません。しかし、平成の終わりに近づくにつれて、様々な人たちがそのような差別に立ち向かってきたことで、女性のエンパワメントが進み、結果的に、医師を始めとする専門的な職業を目指す女性が増加したのでしょう。
北米の国などは、その国の男尊女卑の度合いを示す値「gender gap指数」がとても低いですが、そのような国では、女性の合格者の方が多い場合もあります。世界は徐々に性差別を否定する流れになってきており、そのような中で日本女性の医学部入試合格者が増加してきたことは、世界的に見れば当たり前のことであると言えます。
社会が求めている女性医師とは?
女性医師に対するニーズの増加の背景には、「女性医師に相談したい」「できれば、女性医師に治療をしてもらいたい」ということが一因として挙げられます。では、女性医師が求められている場面とは具体的に何でしょうか。女性医師に対するニーズ増加について詳しく分析していきましょう。
女性特有の疾病や体の悩みに「寄り添う」医師が求められている!
女性の医学部入試合格者が増加してきたのはここ20年余りのことなので、現役で働いておられる医師の中で女性医師の割合はまだまだ少ないのが現状です。
このような現状で、「女性特有の疾病や体の悩み」は「女性」の医師に相談したい・治療してほしいというニーズがあることもまた事実です。
具体的には、月経過多の辛さ・子宮頸がんなどの婦人科疾患についての悩み・不妊・更年期への不安などであり、これらの相談をするには「女性特有の疾病だから、女性じゃないと辛さが伝わらない」と考える患者は多くいます。また、これらの女性特有の疾患の相談や治療をクリニックの外来などで出来る、ということが一般的に知られるようになったのもここ最近です。そのため、「同じ医師になら男性よりは、女性医師に診てもらいたい」という要望が出てくるようになったのではないかと思います。
女性の悩みは女性に相談するのが一番だ、と言う意識が患者に広がっていったことが伺えます。
患者が医療に「主体的に参加する」ことが当たり前になったことも、女性医師ニーズ増加の一因
今までは「医師のパターナリズム」と呼ばれる意識が蔓延していました。これは、「医師の言うことは正しい、だから患者はそれに従うだけでよい」という意識のことで、医療者と患者の間に、封建的な「父と子」の関係があったことを意味します。
近年は患者の主体性が重要視されるようになり、患者が自分の要望をきちんと伝えられる、健全な医療が行われる土壌が醸成されてきました。このため、昔であれば「女性医師がいいというのはワガママだ」といった意見も少なくなり、患者が自分の希望を言いやすい環境になったことで、女性医師を求める声が増えているのではないかとも考えられます。
日本人の思う「女性医師のニーズ」は男性では満たせないものなのか
「優しい」「丁寧」「寄り添った医療ができる」など、女性医師を求める時によく言われるのがこれらの言葉です。確かに、日本においては女性は男性よりも「優しく」て「丁寧」かもしれません。しかし、果たしてこれらのニーズは男性医師では満たせないものなのでしょうか。
「女性医師のニーズ」は、プロフェッショナルに対する無理解である
日本人が思う「女性医師のニーズ」は、決して男性医師では満たせないような要望ではありません。優しい言葉遣いはどんな性別であっても本人の意識でコントロールすることが出来ます。患者を不安にさせない丁寧な治療も、プロフェッショナルであれば当たり前に出来なければならないことです。もしも、男性医師がこれらのニーズを満たせないのであれば、それはプロフェッショナルとして失格なのです。
逆に、男性医師に求めるような「正確な治療」「高度な医療」を女性に求める声が少ないのは、女性医師のプロフェッショナリズムを軽視していることに他なりません。
医学生は、男性も女性も等しく、同じ教育を受けて医師になります。プロフェッショナルとして、患者を安心させる診療を行い、丁寧かつ正確な手技で疾患の治療に全力で取り組みます。
多くの日本人が思う「女性医師へのニーズ」は、プロフェッショナルに対する無理解から生まれているのだと私は思います。「寄り添った医療」は決して「女だからできる」「女でもできる」のではなく、プロの技術であることを知っておくべきです。
女性医師の増加は喜ばしいこと、しかし社会はそれを正しく求めるべき
女性医師の増加は喜ばしいことに違いはありません。男性の封建的な状態が長年続いた医療業界に女性が増えることで、より多様なニーズに応えることができるようになるでしょうし、風通しの良さは健全な医療の発展に必要なことです。
しかし、社会は女性医師に対するニーズを間違えてはいけません。女性医師にできることは男性医師にできることであり、女性医師にできないことは男性医師にもできません。患者として「女性医師を選べる」ということは大切ですが、それは「男性医師にできないから」という理由であってはならないと考えます。
自らのニーズを正しく認識することで、医師と患者の双方にとって良い医療が出来るようになると思います。
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