東京医科大学の収賄事件を発端として、医学部入試における女子差別・男子優遇の不正が明るみに出ました。医学部受験を控えている人たちにとっては非常に不安にさせられる事件だったと思います。
また、実際に受験して差別をされ不当な不合格を突きつけられた受験生にとっては、絶望の事実だったことでしょう。
医学部受験における合格率は男女で本当に異なっているのでしょうか。今回は医学部受験の合格者の男女比率を中心として、医学部入試の実態を分析していきたいと思います。
医学部専門予備校の武田塾医進館では88%の生徒が偏差値11以上アップ!
武田塾医進館では、「授業をしない」「一冊を完璧に」「自学自習の徹底管理」で志望校への合格の最短ルートを目指します。 最難関の医学部だろうが、東大だろうが、成績が一番上がる勉強法はただ一つ、自学自習でレベルに合った参考書を一冊ずつ完璧にしていくこと、これが最速の勉強法です。
医学部受験の合格率を男女で比べてみると
医学部受験における合格率は男女で本当に異なっているのでしょうか。それを詳細に調べたデータがあります。
2018年度医学科入試の合格率の男女比
東京医科大学における女性差別入試の事件をきっかけとして、ハフポスト日本版が日本にある81の共学の医学部に男女別の受験者数と合格者数を請求し、そのうち回答があった76大学のデータから男女別の合格率を算出、さらに男子の合格率を1とした場合の女子の合格率を割り出して比較しています。
最も女子の合格率が高かった島根大(1.64)から、女性差別入試で揺れている東京医科大(0.33)まで、同じ医学部でも、女子の合格率に大きな差が生じていることが分かった。
男女の合格率が同じか、女子が男子を上回っていることを示す「1」以上の大学は、76校中18校あった。
女子の合格率が最高だったのは、島根大学の1.68。男女が同数受けたとして、男性は女性の6割しか受からなかったことを意味する。国公立で「1」以上の大学は、島根のほか福井、大分など、地方を中心に12あった。私立も杏林、自治医科、関西医科、東京慈恵会医科など1以上のところが6校あった。平均は、0.86。(HUFFPOST日本版より)
URL: https://www.huffingtonpost.jp/2018/08/10/igakubu-data_a_23499881/
このデータから分かるのは、「男女で合格率が著しく異なる大学は存在している」という事実、そして男子と女子の合格率に差があまりない(=女子の合格率の比が1に近い)大学は地方に多いということです。都市部の医学部で男女の合格率が大きく異なるのは意外な事実であると言えるでしょう。
私立医学部の二次試験における不透明性とは
私立医学部の多くは独自に一次試験と二次試験を行なっており、ほとんどの大学が一次試験は筆記、二次試験で面接や小論文を課すスタイルとなっています。
私立医学部の一次試験の筆記試験は比較的多くの受験生がパスしますが、二次試験の通過はかなり狭き門であり、正規合格はもちろんのこと補欠合格も非常に難関です。
この事実から何が読み取れるのでしょうか。
面接試験は人による試験です。人間ですから、完璧に公平な評価は不可能と言って良いでしょう。また、小論文試験も、採点基準があるとはいえ、採点する教員の人格などによって評価が大きく左右されることは間違いありません。つまり、私立医学部における二次試験はブラックボックスなのです。
読売新聞の調査で「私立医学部における二次試験での男女別の合格率のデータ」が公表されました。その調査によって、聖マリアンナ医科大学・昭和大学・日本大学・東京医科大学などの医学部の二次試験では、女子が「厳しく」評価されている、という結果が浮き彫りになったのです。
公表されたデータでは、上に挙げた4つの大学の二次試験の合格率は、男女で10%以上も違っていました。つまり、女子は受かりにくい大学であるということが客観的に明らかなデータだったのです。
いずれの大学も、これまで予備校などでは「女子の合格者が極端に少ない」「女子には不利な大学」と噂されてきました。それがこのデータによって事実であると判明したと言えます。
またこの中では、実際に東京医科大学が二次試験の小論文において女子受験生に対して得点調整を行なって不利な状態にする不正を行なっていたことが明らかになっています。
国公立医学部の一般入試の場合も、一次試験はセンター試験という共通の筆記試験ですが、二次試験は筆記試験の科目も小論文の有無、面接試験を点数評価にするか・段階評価(A~Dなど)にするかなど、かなりばらつきがあります。
国公立だからといって合格者の男女比の調整のために不正入試が行われていないとは断定できません。
データから医学部受験生が考えるべきこと
ハフポストの独自調査や読売新聞の調査により明らかになったデータから分かるように、女子や浪人生に不利な入試を行なっている大学は確かにあり、これらの大学がすぐに差別入試を止めるのかと言われれば、決してイエスではないでしょう。大学という組織はそう簡単に変わりません。
また、医師の劣悪な労働環境がこの不正入試を生み出した一因となっていることも無視できない事実です。
男性医師が家事・育児へのコミットすることを許容しない過密な労働時間や、フレキシブルな働き方を認めない主治医制度によって既婚・子有りの女性医師が働き続けることが難しい状況、妊娠する時期を制限するようなハラスメントの横行など、改善しなければならない点はまだまだあります。
それでは、今、医学部受験を控えている受験生たちは何を考えておくべきなのでしょうか。
差別入試は絶対にダメ、しかし今の受験生が取るべき行動は?
差別入試は許されることではありません。けれども差別入試と戦う(法的な措置を求める)のはかなり労力がいることで、時間もお金もかかります。泣き寝入りは決して推奨されることではありませんし、強要されることでもありません。
しかし、現実問題として、受験生である皆さんにとっては医学部受験を突破して、医学部に入学することがまずは関門でしょう。合格者のデータから不利とされている女子の受験生や浪人の受験生たちが今取るべき行動は、『誰よりも勉強すること』です。これしかありません。
誰よりも勉強し、隣の席の男子よりも遥かに優秀な成績の女子が、1年間医学部受験の勉強だけに打ち込んできた男子浪人生が、現役男子と同じ医学部を受験して不合格だったからこそ、この事件は問題であることは百も承知です。
しかし、勉強しなければ医学部受験突破の学力が手に入らないこともまた事実です。
誰にも負けない、文句のつけられない学力を手に入れて、そこでもし不合格を突きつけられたのならば、戦いましょう。自分を磨きあげ、鍛錬することが皆さんの本分です。
不合理な入試をくぐり抜けた人もそうでない人も、現役の医学生の中では、この差別入試問題に実際に向き合い、入試の透明化を要求する署名活動や省庁交渉に取り組んでいる人たちがいます。
皆さんの不安や怒りは私たち現役の医学生が受け取ります。だから、今は勉強に専念してほしいと心から思います。
医学部入試の差別問題、解決への糸口は一人ひとりの意識改革
医学部における男子優遇・女子差別の入試は、「公平に行われている」という試験の前提を全く覆してしまう重大な事件です。
公平に行われていることを信じてこれまで医学部受験をしてきた数多くの女子学生や男子浪人生たちを絶望させたことは、決して許されることではありません。
全ての医科大学が入試における評価基準を明確に提示し、公正な評価を行うことを第3者が監督する必要もあると私は思っています。
コメントを書く